
産後の身体の歪み、もしかしたら側弯症かもしれません。
出産後の体は、妊娠中のホルモン変化や体重増加、出産による骨盤の開きや関節の緩みに加え、育児でのさまざまな動作の影響により、身体への負担が急激に増加します。
さらに、子どもの頃に側弯症と診断され、経過観察を続けてきた方は、産後に症状が悪化することがあります。例えば、
・ウエストのくびれの位置が左右で違う
・左右で肩の高さが違う
・授乳や抱っこの際に右の背中の出っ張りが目立つ
・右の肩が巻き肩になっている
といった悩みは珍しくありません。
また、子どもの頃の健康診断や学校検診で側弯症が見落とされていたケースもあります。
軽度で自覚症状がなかったため気づかないまま成長し、妊娠・出産による体重増加や骨盤の変化、育児での負担によって側弯症の背骨のゆがみが顕著になり、肩こりや腰痛、姿勢の左右差として初めて自覚することもあります。
このブログでは、産後ママさんが抱える側弯症の症状や原因、将来的な影響、そして当院での具体的なケア方法について詳しく解説します。
側弯症とは?基礎知識
側弯症は、背骨が左右に曲がった状態を指します。
軽度の場合は自覚症状が少ないこともありますが、進行すると肩こりや腰痛、姿勢のゆがみが日常生活に影響することがあります。
側弯症は大きく構築性側弯症(構造性側弯症)と機能性側弯症の2つに分けられます。
・機能性側弯症:筋肉の緊張や左右差、姿勢の偏りなどによって一時的に背骨が曲がっている状態で、原因を取り除けば改善可能です。
・構築性側弯症:背骨自体が変形やねじれを伴い、固定された曲がりのあるタイプです。成長期に進行することが多く、軽度でも将来的に症状が出やすいのが特徴です。
さらに、この構築性側弯症は原因や発症時期に応じて、次の3タイプに分けられます。
1)特発性側弯症:原因不明で成長期に発症することが多く、思春期の女の子に多いタイプ
2)先天性側弯症:生まれつき背骨の形が異なるもので、早期に発見されることが多い
3)症候性側弯症:他の病気や障害に伴って発症するタイプ
特に産後ママの場合は、子どもの頃に診断され経過観察していた方も、健康診断や学校検診で見逃されていた方も含め、ほとんどのケースが思春期に発症する特発性側弯症であることが多いです。
妊娠・出産による体の変化で症状が顕著になり、肩こりや腰痛、姿勢の左右差などとして現れることがあります。
重要!妊娠・出産・育児で側弯症が悪化する可能性と原因
子どもの頃に軽度側弯症と診断されていた方でも、妊娠・出産・育児を経て症状が悪化することがあります。
その主な原因は次の通りです。
1)ホルモンの影響
妊娠中は「リラキシン」というホルモンが分泌され、靭帯や関節が緩みます。そのため骨盤や背骨の安定性が低下し、側弯症の変形が悪化しやすくなります。
2)体重増加と重心の変化
妊娠中の体重増加により重心が前方に移動すると、背骨や骨盤に負担がかかり、側弯症の変形が悪化しやすくなります。
3)体幹筋力の低下
出産後は腹筋や背筋、骨盤底筋などの筋力が低下し、背骨や骨盤を支える力が弱まります。体幹の安定性が失われることで、側弯症の変形が悪化しやすくなります。
4)育児による姿勢負荷
抱っこや授乳、家事など、前傾姿勢を長時間続ける動作は背骨や肩の筋肉に負担をかけます。
特に左右どちらかに偏った抱き方を繰り返すと、側弯症の変形が悪化しやすくなります。
多くの場合、側弯症の変形が進行することで、ウエストのくびれの左右差といった見た目の問題だけでなく、肩こりや背中の張り、腰痛、股関節痛などの身体的不調も生じることがあります。
将来的な問題
側弯症を放置すると、将来的に次のような影響が考えられます。
- 慢性的な肩こり、背中の張り、腰痛、股関節痛、坐骨神経痛などの痛み
- ウエストのくびれや肩の高さの左右差など、見た目への影響
- 片側の肺が圧迫されることで呼吸が浅くなり、疲れやすくなる
- 育児や家事による身体への負担が増すことで、さらに側弯症が悪化する可能性
- 成人以降も1年に1度くらい進行することもある
そのため、産後の早い段階から側弯症への適切なケアを行うことが非常に重要です。
絶対やってはダメな習慣・NG姿勢
側弯症の方は、楽に感じるため背骨が曲がっている側へ身体を傾ける姿勢をとりやすくなります。ですが、この姿勢は側弯症を悪化させるリスクが高く注意が必要です。
ここでは、側弯症の典型的なパターンである「胸椎右凸・腰椎左凸」の、いわゆる左側の胸郭が縮みやすいタイプの側弯症を前提に解説します。
・授乳のときに上半身が左に傾いている
授乳のときに、つい赤ちゃん側に身体を寄せて 上半身が左に傾いたまま になっていませんか?
この姿勢が続くと、左側の胸郭がさらに縮みやすくなり、
側弯のカーブを強めてしまうリスク があります。
⇒ 授乳時は
・できるだけ 身体をまっすぐ正面に保つ
・左側の胸郭が ふわっと広がるイメージ で座る
ことを意識してみてください。
・抱っこのときに身体が左に傾いている
左腰に赤ちゃんを乗せて、上半身もそのまま左に傾く「片側抱っこ」、習慣になっていませんか?
この姿勢も、授乳と同じく左側の胸郭を縮め、
側弯症の悪化につながる可能性 があります。
⇒ 抱っこのときは
・できるだけ 身体の正中で抱っこする
・左右を交互に使う
・左側の胸郭がつぶれないように、軽く胸を引き上げる
といったことを心がけましょう。
・抱っこのときに腰だけ前に突き出している
赤ちゃんの重さを支えようとして、
腰を前に突き出し、背中が丸くなる猫背姿勢 になっていませんか?
この姿勢は、背骨の支えがゆるくなり、
側弯症が進行しやすい状態 をつくってしまいます。
⇒ 抱っこのときは
・腰を前に出さずに みぞおちを軽く引き上げる
・胸を少し開いて、背骨が「上に伸びている」感覚を意識する
ようにしてみてください。
・右側を下にして横向きで寝ている(添い寝を含む)
横向き寝や添い寝のとき、
いつも右側を下にして寝ている 方は要注意です。
右側を下にすると、上になっている左側の胸郭がつぶれやすく、
左側の縮こまりが強くなる=側弯が悪化しやすい 姿勢になります。
⇒ 添い寝のときは反対に、
左側を下にして寝ると、縮んでいる左胸郭が広がりやすくなる ので、
横向きで寝る場合は 左側を下 にするのがおすすめです。
・左手でスマホを持って、同じ側に首を傾けて見る
左手でスマホを持ち、画面を覗き込むように首や上半身が左側に傾いた姿勢 が続くと、
やはり左側の胸郭が縮みやすくなります。
⇒ スマホを見るときは
・できれば 右手で持つ
・目の高さに近づけて、首が横や下に傾きすぎないようにする
・左胸郭が少し広がるイメージで、軽く姿勢を起こす
ことを意識してみてください。
当院での施術と運動療法
当院では、産後ママさんの側弯症ケアとして以下の方法を提供しています。
【シュロスベストプラクティスⓇ】
シュロスベストプラクティス®は、ドイツで開発された「シュロス法」を最新の知見に基づいて発展させた、側弯症に特化した運動療法の現代版プログラムです。
従来のシュロス法と比べ、シュロスベストプラクティス®は日常生活の中で姿勢を改善し再現できることを重視している点が大きな特徴です。
そのため、以下のような実践しやすい内容が中心となっています。
- 立ち姿勢・座り姿勢の最適化
- 歩行時の重心の使い方指導
- 短時間で行える“日常生活に溶け込む”エクササイズ
これらにより、施術や指導の場だけでなく、自宅・学校・職場でも無理なく継続しやすい最新メソッドとして高く評価されています。
さらに、シュロスベストプラクティス®の大きな強みは、側弯症の保存療法として国際的なエビデンスが確立していることです。
側弯症保存療法の国際的学術組織である SOSORT(国際側弯症保存療法学会) により、シュロス法およびシュロスベストプラクティス®は科学的根拠に基づく有効な運動療法として正式に認められています。
【側弯症ピラティス】
体幹を強化し、左右差を整えることを目的としたピラティスプログラムです。
背骨や骨盤の歪みに合わせた動きを行うことで、肩こりや腰痛の軽減、そしてクビレの左右差の改善も期待できます。
側弯症の場合には、自分の変形パターンを正しく理解し、オーバーコレクション(歪みを補正する方向へ意識的に強調した動き)を取り入れることが重要です。
適切に行うことで、体幹の安定性が高まり、歪み改善の効果がより大きくなります。
一方で、側弯症の知識がないインストラクターの指導でピラティスを行うと、動かし方を誤り逆効果になったり、歪みを強めてしまう可能性があります。
そのため、側弯症を正しく理解しているインストラクターのもとで行うことが大切です。
骨盤矯正や整体、マッサージ、カイロプラクティックでは不十分な理由
整体や骨盤矯正、マッサージ、カイロプラクティックなどは、筋肉の緊張を一時的に緩めることができるため、肩こりや腰痛の軽減には効果的です。
しかし、これらの施術では背骨そのものの構造的な弯曲や左右差を根本から改善することはできません。
さらに、筋肉をただ緩めただけの状態で施術を終えると、支えが弱くなった背骨が逆に歪みやすくなり、変形が進行してしまう可能性さえあります。
側弯症は、背骨の歪みや体幹の筋バランスが人それぞれ大きく異なるため、個々の変形パターンに合わせた専門的な運動療法が不可欠です。
その点、シュロス法や側弯症ピラティスは、歪みの改善だけでなく、将来的な悪化の予防にも効果が期待できる科学的アプローチであり、側弯症に適した方法として高く評価されています。
まとめ
- 産後にウエストのくびれの左右差が大きくなった場合、側弯症が隠れている可能性があります。
- 子どもの頃に側弯症があった方は、産後に悪化するケースもあります。
- 放置すると、慢性的な痛みや姿勢の崩れ、二次的な関節トラブルへつながる恐れがあります。
- 側弯症は成人以降もゆっくり進行する可能性があることを理解しておくことが大切です。
- 専門的な運動療法(シュロス法・側弯症ピラティス)は、改善と悪化予防に有効です。
- 当院では、施術と運動指導の両面から産後ママの身体をトータルにサポートしています。
側弯症があっても、産後の身体はしっかり整えられます。
早めにケアを始めることで、肩こりや腰痛の予防はもちろん、側弯による歪み、姿勢の崩れ、くびれの左右差は改善が期待できます。
育児で自分の時間を確保するのは大変ですが、ひとりで我慢せずにご相談ください。
当院では、個々の状態に合わせた施術と運動プログラムで、側弯症をお持ちのママの産後ケアをしっかりサポートします。
著者プロフィール 伊集院 博
兵庫県神戸市生まれ。千葉県千葉市在住。2007年に千葉市中央区にて伊集院鍼灸整骨院を開業。現在は千葉県で2店舗の鍼灸整骨院とマシンピラティススタジオの代表を務める。
『子どもの幸せはママの笑顔から』をミッションに掲げ、ママと赤ちゃんに日本で一番やさしい整骨院を目指し、整骨院に保育士在籍の無料託児所を併設。託児は保育士がマンツーマンで対応するなどサービス内容も充実している。
産後の腰痛、股関節痛、恥骨痛、尾てい骨痛などの改善や、体型戻しのトレーニング指導には定評があり、産後の不調で来院されるママさんは年間延べ5,000人以上。
著書『ゴールデンライン 美しい姿勢をつくる44のレッスン』
主な資格と実績
- 伊集院鍼灸整骨院グループ代表
- 柔道整復師(国家資格)
- 鍼灸師(国家資格)
- ケアマネージャー
- シュロスベストプラクティスⓇ
(側弯症運動療法の資格) - 側弯症ピラティスインストラクター
- BESJ認定ピラティストレーナー
- BTA認定バレエダンサートレーナー
- ハワイ大学解剖実習終了
- 治療家大學技術講師就任

















